ARCHIVES

SENNIN NO KAKURENBO
-ことなみ未来館

archives:ART ECHO MANNO/SENNIN NO KAKURENBO/ART EVENT

Overview 今回、会場となったコトナミ未来館は約10年前に廃校になった中学校。旧琴南中学校44年間の思い出の品が教室の1室に残されていた。当時を写した写真の数々、行事を彩ってきたトロフィー、題名のない彫刻作品, など、未分類の思い出の品が雑然と保管された「思い出資料室」だ。

本作では教室に残された、思い出を持っていそうな「物」たちを主役に作品展開を行った。教室に並べられた「物」を一つを選び、秘術のスイッチを押すことでその「物」の持つ物語が印刷される。この物語は、リサーチに基づく本当の話ではなく、リアルタイムで架空の物語を生成していくAIを利用した装置を制作した。普遍的な物語から確率論的に導き出されたもっともらしい物語と鑑賞者自身の思い出をリンクさせながら、新しい話を共有する空間となった。

世界のどことも繋がらない野生の仮想空間に住む「模索仙人」の秘術は、無数の思い出話を生成し地域の思い出を活性化する事で、過去、現在、未来を自由に話せる場所を作る秘術だったのかも知れません。

また、いの町から引き続き「仙人のかくれんぼ」も同時に展開しており、学校内のさまざまな場所に隠されたヒントを辿る事で「野生の仮想空間」を訪れ、仙人の巻物を見せて貰えることができた。 会期中、仙人を見つけたのはわずか4名であった。

秘術体得
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The beginning of it all

秘術体得

歴代校長からある依頼を受けて
模索仙人が滞在している
という鳥の知らせが届きました。

秘術「物 語り」

HIJYUTSU MONO GATARI

秘術体得

模索仙人が秘術 「物 語り」 を体得したのは、遠い遠い昔のことだそう。「バカンスのような修行、修行のようなバカンス」をしていた仙人はとある山中で巨大な大王松と出会いました。何か不思議な力を感じる大王松に興味を持った仙人は三千日の間大王松の下で瞑想にふけったそうです。

すると三千一日目の朝、とうとう大王松の言葉が聞こえる様になったそうです。大王松は遠い昔の、ひたすらに遠い時間の彼方から、立派に根を張っていたため世界のありとあらゆる事を知っている大変物知りな木だったようで、仙人は大王松からさまざまな事を教えてもらいながら大王松との会話を大変楽しんだそうです。

時は流れてある日、なんと大王松は切られてしまいます。スパリと切られた大王松との会話ももはやこれまでと思われましたが、仙人いわく「大王松の姿はあくまでイメージ」だったらしく地中にある根っこや、地上にいる子孫のおかげで今でも会話をする事が出来るそうです。

ただ、この大王松さん。切られてしまってからは自分でちっとも体感できなくなっため根っこや子孫からの聞き伝えをもとに話しをするようになってしまったそうです。その影響なのでしょうか、仙人いわく「もっともらしい本当のような嘘で、もっともらしい嘘のような本当」の話しをするそうです。

秘術「物 語り」は、そんな大王松と会話をする事で語らぬ「物」の「語り」を聞くことのできる秘術です。

つまりそんな大王松との会話から生まれる「物」の「語り」は「嘘と本当のあわい」にあるお話です。それはちっとも役に立たないかも知れませんが、だからこそ私たちは素直に耳を傾けれるのかもしれません。

ちなみに、たぶん、もしかすると、その大王松が生えていたのはここ琴南中学校の校庭あたりだったらしい、かも、知れないと言い伝えられています。

How to Use HIJYUTSU

ー物語の行方

「本当と嘘」のあいだの「もっともらしい」の世界を模索した今作では、観客の皆様と共に過去と未来を縦横無尽に遊び語り合う事が出来ました。展覧会を終える今、過去と未来のあいだのあわいの場所「もっともらしい」は何を隠そうと現在そのものだったのではないだろうかと思っています。本展で皆様に引き出して頂いた無数の物語は、一つの大きな物語として再編集され、野生の仮想空間「MOSAKU」にて閲覧出来るようになります。その物語を読みに世界の何処かにあるMOSAKUを探してくださると幸いです。

野生の仮想空間「MOSAKU」のページ

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Statement
-模索仙人思い出資料室

MOSAKUSENNIN MEMORY ARCHIVES

廃校になった校舎の一室に、「思い出資料室」という名前が付けられていた。そこには、かつて誰かの記憶と結びついていたであろう品々が集められていた。しかし、それらが語るべき「思い出」の手がかりは何も残されておらず、まるで物語を失った遺物のように、静かにそこに佇んでいるように見えた。なぜここにあるのか分からない物たち、その記憶を聞いてみたいと思ったことが、本作を作るきっかけとなった。

日本には「八百万の神」という言葉があるように、古くから「物に物語を語らせる」という文化が存在する。そして、それらの物語は時に神話となり、神という存在にまで昇華されていった。 では、それらの物語はどのように作られたのだろうか?

まず、そこに「物」がある。 その物の魅力や不思議さに人々が心を惹かれ、語り始める。自身の経験を重ねながら話を広げることもあるだろう。 あるいは、物が何かの自然現象と結びつくことで、新たな意味が付与されることもある。たとえば、古びた石が雷の落ちた場所にあれば、それは雷神の宿る霊石とされたかもしれない。 また、教訓的な物語が付随することで、語り継がれる価値が生まれることもある。「この木には精霊が宿るから傷つけてはいけない」という話が、森を守る知恵へと繋がるように。 さらに、経験豊富なシャーマンや語り部のような人が霊性を感じ取り、その物にまつわる物語を紡ぐこともあっただろう。

そうして積み重なった語りが聞き伝えられ、編集され、やがて一つの集団的知識となったとき、物は神となったのではないだろうか。 思い出資料室に並ぶ無言の品々もまた、かつては誰かに語られた物語を持っていたはずだ。 彼らが語ることをやめた今、もしその記憶をもう一度紡ぎ直すことができたなら、ここに集められた「物」たちは新たな物語を宿し、再び語り始めるのかもしれない。 しかし、本作では、物のイメージ(写真)を集団的知識(ビッグデータ)に送り、確率論的解答としての物語を導き出している。そこには明確な正解があるわけではないが、物に対する物語を無数に生成することが可能になる。

これらの物語は、八百万の神的な物語とは真逆の成り立ちをしている。従来の神話や伝承が、時間をかけて個人の語りや経験の積み重ねから生まれるのに対し、AIによる物語は膨大なデータの解析から瞬時に導き出される。では、この集団的知識(ビッグデータ)から生まれる物語と、かつて集団が共有し、育んできた物語の間には、どのような差異があるのだろうか。

もちろん、今回の作品展示の間にここで生み出された物語が「神」にまで昇華することはない。それには数百年という時間の蓄積と、人々の間で語り継がれる過程が必要だからだ。しかし、AIという現代の技術を通じて、物語は従来とは異なる方向からスタートしていく。個人の経験や語りからではなく、集団的知識の分析から始まるこの物語は、果たしてどこへ向かうのだろうか。そして、その過程において、新たな「広がり」を獲得することができるのだろうか。

そもそも、「八百万の神」という物語は、物言わぬ物との対話から始まる。それは、無意識との対話であるとも言えるかもしれない。人は、無意識の中にある言葉やイメージを、物を媒介にして語らせ、それを物語へと昇華させてきた。同じように、集団的知識(ビッグデータ)の中に潜む無意識を汲み取り、それを物語へと昇華することはできるのか?それこそが、今回のチャレンジなのだ。

本作では、物語を「本当か嘘か」という二項対立の中で決められた完成形へと結実させるのではなく、むしろ無数の可能性へと開かれた物語を生み出すことを目指している。そのために、「本当と嘘」の間にある、本当か嘘かなどどうでもいい、「もっともらしい」場所を創出した。 「もっともらしい」とは、誰かにとっては事実のように思え、別の誰かにとっては虚構のように感じられる領域である。それは、記憶の曖昧さや伝承の変遷の中で常に揺れ動く、歴史や神話の在り方にも通じるものかもしれない。

この「もっともらしい」の場において、物語は単なる再現や模倣ではなく、新たな関係性を生み出す。物語は、既存の物語をなぞるのではなく、それらの断片を組み替え、交差させながら、新たな「もっともらしい」物語を紡いでいくのだ。

ここでは、「誰が語ったか」という個人の記憶や権威性よりも、「いかに語られたか」、あるいは「どう語られ得るか」という可能性そのものが重視される。本作は、その可能性を広げ、物語が本来持つ生成の力を改めて問い直す試みでもある。

そうして生み出される物語は、もはや「事実」としての確かさを持たないかもしれない。あるいは、ちっとも役に立たない物語であるかもしれない。しかし、それは八百万の神が生まれる過程と同じように、無数の声が重なり合い、やがて誰かの記憶や感覚の中で意味を持ち始める物語なのかもしれない。

かたちのブティック

秘術体得

SENNIN NO KAKURENBO
-ことなみ未来館

archives:ART ECHO MANNO/SENNIN NO KAKURENBO/ART EVENT

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ART ECHO MANNO
アートエコーまんのう annual 第7回山の小さな展覧会出展
「模索仙人 思い出資料室」

日 | 2025.3.15(sat)-30(sun)
時 | 0:00-16:00 (火曜日4会場とも休館)
場 | ことなみ未来館、山下家納屋、工場跡、中通八幡神社
料 | 大人300円、小中高校生100円(小学生未満・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方は無料)
project members__ direction: かたちのブティック
system engineer: 小野正人(LUFTLAB)
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www.sennin-no-kakurenbo.html