POOL_A

Somewhere in the world,
there is an abandoned school
with an empty pool.

Entangled Pools 水を呼ぶ話

ART ECHO MANNO/Entangled Pools/ART PROJECT

Overview

{プールA}
この話は、ひとつのプールとの出会いから始まりました。 廃校になって久しい学校のプールには水がなく、かつて水が存在していた痕跡だけが静かに残されていました。底に降り立つと、空間は奇妙な反響を返していました。 そのとき、理由もなく「水を呼ぶ話」という言葉が浮かび上がりました。 それは、水を運ぶ話ではなく、まだ存在していない関係を呼び寄せる話のように感じられました。

{フィールドワーク1}
最初の調査は、どうすればこの空のプールに実際に水を引き込めるのか、という極めて物理的な問いから始まりました。 最短距離の川、水源の位置、農業用水や生活用水の経路を辿っていくうちに、水は単に高い場所から低い場所へ流れるだけではなく、人間の意思によって複雑に設計され、分配されていることが見えてきました。 水の流れは自然の現象であると同時に、土地の歴史や社会の構造を記録したインフラでもあったのです。

{フィールドワーク2}
さらに水の流れを追う旅を続けると、この地域が長い時間をかけて水を確保してきた土地であることが分かりました。 ため池、水路、堰、そして雨乞いの儀式。 そこには、水を「運ぶ」技術と同時に、水を「呼ぶ」という思想が数多く残されていました。 水は単に到達するものではなく、 人と土地、空と地表、複数の場所の関係によって現れるものとして扱われていたのです。

{フィールドワーク3 — 水を呼ぶ行為}
私たちの関心は次第に、水を引き込む方法から「水を呼ぶ」という行為そのものへと移っていきました。 伝承では、祈願によって蛇が龍となり雲を呼び、雨が降ったと語られます。儀式は山頂の神社から始まり、山を下りながら複数の場所で同じ踊りが繰り返されます。 水に近い場所と、水を必要とする場所。 離れた地点で同じ行為が繰り返されることで、場所同士が関係を持ち、水が呼ばれる。 この構造は、水を移動させるのではなく、 複数の地点の関係を生成することで水を現出させる思考でした。 二つの場所を行為で結ぶという考えに、私たちは強く惹かれるようになりました。

{水と記憶}
水を追い続ける中で、私たちは水と記憶の振る舞いの類似に気づきます。 水は形を固定せず、流れ、循環し、環境によって姿を変える。 記憶もまた、想起されるたびに変化しながら存在します。 記憶は単に保存されるものではなく、 条件が整ったときに現れる現象なのではないか。 もしそうだとすれば、記憶もまた、水のように 関係によって呼び出される存在なのかもしれません。

ART ECHO MANNO
アートエコーまんのう 出展作品
「Entangled Pools-水を呼ぶ話」

日 | 2026.3.14(sat)-29(sun)
時 | 10:00-16:00 (火曜日休館)
場 | ことなみ未来館、プール
34°08'36.2"N 133°57'32.3"E 料 | 大人300円、小中高校生100円(小学生未満・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方は無料)

POOL_B

Somewhere in the world,
there is an abandoned school
with a pool still holding water.

水を呼ぶ話 Entangled Pools

INOB ART CAMP/Entangled Pools/ART PROJECT

Overview

{プールB}
プールBとの出会いは偶然でした。 別の土地で開催される展覧会の調査中、訪れた廃校にもう一つのプールがあったのです。山間の川沿い、廃校という状況、驚くほど似た環境。 ただ一つ違っていたのは、そのプールには水が満たされていたことでした。 二つの場所は互いに無関係でありながら、 まるで同じ構造の別の状態のように存在していました。

{なぜ水があるのか}
その水は泳ぐためではなく、地域の防火用水として保たれていました。 水のないプールAと、水のあるプールB。 多くの文脈を共有しながら、水の有無だけが反転している二つの場所。 私たちは、このネガとポジの関係にある二つのプールを、どのように結び得るのかを考え始めました。 それは二つの場所を移動することではなく、 離れた状態を同時に成立させる構造を作ることでした。

{ゴムボート}
学校のプールにゴムボートは不自然に見えるかもしれません。 しかし本作においてゴムボートは、行為を循環させる装置です。 水のないプールAで膨らまされたボートは、水のあるプールBに展示されます。 一方、プールBで記録された「漕ぐ」という行為は、プールAで上映されます。 行為と結果、場所と記録が分離されることで、 二つのプールは互いを参照し始めます。 ボートの内側と外側の関係は、プールAとBの関係と同様に、 反転可能な構造を持っています。

{Entangled Pools — 観測し合うプール}
プールAからプールBを見ることはできません。 プールBからプールAを見ることもできません。 二つを同時に知覚することは不可能です。 しかし鑑賞者がもう一つのプールを想像するとき、 二つの場所は関係を持ち始めます。 観測が起こることで、離れたプールは互いを観測し合う状態へ入ります。 そのとき立ち現れるのは、AでもBでもない第三のプール。 プールABです。 そこには水が満たされているのでしょうか。 それとも空なのでしょうか。 二つの場所が重ね合わされるとき、 現実は一つの状態ではなく、複数の可能性を含んだまま現れます。 この状態こそが、Entangled Pools です。

{現代において}
水を追い続ける中で、私たちは水と記憶の振る舞いの類似に気づきます。 現代社会では、離れた出来事同士が絶えず接続されています。 情報、記憶、出来事はネットワークの中で同時に影響し合い、互いの状態を変化させ続けています。 しかし私たちは、その関係そのものを見ることはほとんどありません。 この作品は、水を運ぶ装置ではありません。 また、水を再現する装置でもありません。 離れた場所、離れた時間、離れた記憶が、 行為と想像によってどのように関係を持つのかを観察するための装置です。 水のないプールと、水のあるプール。 行為が起きた場所と、結果が現れる場所。 それらが互いを観測し始めるとき、 世界は単一の現実としてではなく、関係の重なりとして現れます。 「水を呼ぶ」とは、 存在しないものを作ることではありません。 まだ関係していないもの同士を結び、 そこに新しい現実が現れる条件をつくることです。 この作品は、その瞬間を呼び寄せようとしています。

INOB ART CAMP
イノビアートキャンプ 出展作品
「水を呼ぶ話-Entangled Pools」

日 | 2026.3.20(fri)-22(sun)
時 | 10:00-16:00
場 | いの町立下八川小学校、プール
33°36'23.1"N 133°17'48.7"E